2004年11月大阪、2005年6月東京で上演された作品「百千万」のコンセプトを元につくられる創作初演とも言える。
「演劇に鉄槌を」をテーマに劇団鹿殺しが抱く演劇に対する誇りを体現するような作品となる。2005年4月の東京進出後、劇場公演にとどまらず、路上パフォーマンス、ライブハウス公演、野外音楽フェスへの参加など、あらゆる場所で身一つで行う演劇のかっこよさ、可能性を模索してきた劇団鹿殺し。その集大成となる作品です。
一幕ごとに劇団員のアイデアを得意とするパフォーマンスを生かしたオムニバス形式をとり、各劇団員も劇作にも挑戦するなど、まさに「今の」鹿殺しのすべてをそそぐ作品作りとなります。そのさまざまな世界を旅したエンゲキ少年が感じる人間の可能性を通して、演劇そのものの可能性を観客に感じさせるものにしたいと考えます。
あらすじ
福井県美浜町の原発で事故が起こる。同じ年に生まれた少年、「エンゲキ」。彼の頭は肥大し、腸でぐるぐる巻きの体はがんじがらめの姿であった。 母親は彼を産んですぐに失踪。父親は醜い息子「エンゲキ」を哀れみ、部屋に閉じ込めて育てる。
しかし、ある日外に飛び出し鏡をのぞいた「エンゲキ」は自らの醜い姿を目撃。 父親は言う。「外の世界など見なくてもいい。お前には何もできないのだから。」 「自分には何もできないのだろうか。なぜ自分が醜く、非力に生まれてきたか、そのなぞを解きたい!」家を飛び出したエンゲキは不自由な体で長い長い旅に出る。旅の途中、さまざまな世界で力いっぱい生きる人々の姿に、生きること、一心に何かを突き詰めることの持つ力、メッセージを受け取り、エンゲキは少しずつ、自分の中に芽生える野心や衝動を確認していく。はたして彼の長い旅路の果てにあるものは何なのか・・・。
原発事故に隠された秘密をとくサスペンスな一面を見せながら、劇団鹿殺しの抱く「演劇」の可能性を探すロードムービーとも言える作品。
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