イントロダクション

 20年ぶりに姿を現した同級生は、あの日の姿のままだった。
 大阪府豊中市鹿野工務店、歌劇団を夢見る僕らを置いて電車は動き出していた――


 舞台は大阪、豊中市。ヒロは幼なじみの鹿野たけしと共に鹿野工務店で働きながら仕事仲間と歌劇団を結成、自作のロック歌劇を上演している。 素人歌劇団にはもちろん客などいない。それでもいつか世間に認められることを夢見て活動を続けている。ある日、不慮の事故により工務店の社長が急死し、 状況は一変。当たり前のように舞台ができなくなったヒロたちの前に現れたのは、子供の頃の友人・鉄彦。電車が大好きだったこの少女は、なぜか20年前と同じ姿であった。 鉄彦の出現により、ヒロとたけしを取り囲む環境は、当たり前の日常から大きく変わり始める──自分の理想と才能の限界、現実の厳しさの中で立ち尽くす主人公たちに、 かつての自分の分身でもある鉄彦がまっすぐな力を与えてくれる。

 劇団鹿殺しの半ドキュメンタリーともいえる劇団の夢を追う人々の姿に、阪急電車で過去実際に起こった事故とノスタルジックかつ奇天烈なエピソードが絡みあう。

 青山円形劇場で好評を博した、鹿殺しの代表作を東京芸術劇場で再構築。