「赤とうがらし帝国」特別対談 第一弾 「丸山厚人×オレノグラフィティ」

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今回初めて鹿殺しに出演していただく丸山厚人さんに、高円寺在住オレノグラフィティが気になるところを余すことなくインタビューさせてもらいました。

オレノグラフィティ(以下、オ):丸山さんが初めて鹿殺しを観られたのって「僕を愛ちて。」でしたよね。
鹿殺しを初めて観られたときってどう思われました?

丸山厚人(以下、丸)単純にメッチャクチャやなーと思ったね。ウワーと思った。
でもある種、唐さんが好きだったり・・とかっていうところが、ちょっと見え隠れしてたよね。
唐十郎さんていうのはいわゆる妄想の作家と言われてるっていう。
で、丸さんは割と自分の日常を書く人だと思うんだ。
それを、作品として作るために妄想とかってのも出てくると思うんだけど。
日常をただそのままエッセイみたいにやったってつまんないから、っていうことでいろんな世界観をそこに出してくるっていう面白みっていうか。

オ:確かに「僕を愛ちて。」ぐらいから丸尾丸の戯曲は私小説的になってきた気がしますね。
あくまでファンタジーっていうのを手段として用いて、実体験を語るという感じですよね。

丸:そうだね。あと「電車は血で走る」は衝撃的だったね。すごくステキだったよあの作品は。
あれをやるときに、丸尾丸さんが「作家としてすごく自分の中で思いいれのある作品だから絶対観て欲しい!」って言ってて。
どういうものなんかなと思って観たらすごく面白くて。
あの人の中にある家族とか、ふるさととか、そういうものに対する愛とか想いっていうものがすごく明確に出てた気がしたのね、俺はなんか。
そういう意味であの人が作家としてすごくこだわった作品だったのかなと思ったんだよ。
完全に「これ丸さん実体験を全部盛り込んでんのかな?」って思ったぐらい。
あと直接的に結構キツい表現を使ったり、人を殺すとか血のイメージってのはつかさんてきな部分が好きなのかなって感じがしたね。

オ:「ベルゼブブ兄弟」とかですか?

丸:それがただのホラーに見えてしまうと、結構ありがちな芝居になっちゃうんだけど。
「ベルゼブブ兄弟」観たときは何故殺さないといけないのかとか、誰が殺したのかとか真剣に考えたもんね。
そして謎は謎として納得できたもん。
演劇に関わらず、物語っていうのは結局登場人物がいて、その人間がどう、時間を経過したのかいかに生きていくかっていうことになるからさ。
そこにどれだけの面白みを持たせられるかだよね。
丸尾さんの本には、家族愛、ふるさとへの愛情、自分の身近な人たちへの限りない愛みたいなものがあって。
あの人の風貌からはなかなか想像つかんけど。
そこがあるから信じられるんじゃないのかなって気がするんだよね。

オ:憎悪にすらも愛があるんですよね、。愛ゆえの憎悪やから。

丸:だから凄く好感が持てる芝居なんだと思ったね。

オ:丸山さんは今回、主人公、辛島タエの父親でマスクマンレスラーの辛島右近を演じられるわけなんですが、今回の役の見所なんかありますか?

丸:はっきり言って一概にここを観れば面白いってのは言えないんだけど。
丸尾丸さんが書いてる本の中には熱気の中に一つ氷の柱があると思うんだよ。
灼熱の炎かもしれない。でもその中に決して溶けてはいけない氷の柱がある気がしてね。
それが右近なんじゃないかなって。
主人公のタエを生み出したもの、彼女のバックボーンであることが大事っていうか。
丸山君体力勝負大変だったでしょとかそのへんのことを言われたくないんだよね。
だから熱で溶けない。氷を氷としてきープできるか。
それは別にクールに冷静にやるってことではなくて。
熱にまぎれちゃいけないものってのがあるというか。
熱の部分がバッってあったら一瞬シーンをなにかキュと締めるみたいな。

オ:最後まで影響を及ぼすだけの力のある役ですからね。

丸:最後の最後までお父さんがタエの後ろに見えるように何とか持ってけないかと思ってるんだけどなー。

オ:今回は鹿殺し第二十回公演・回帰ということで原点回帰もテーマの一つなんですけれども。
丸山さんのの原点ってなんですか?

丸:んー・・・・・テントだよねー。
それからは逃れられないね。
役者としての原点なのかなって思ってたんだけど最初は。
でもここまで来ると人生の一部だよね・・。

オ:テントかー。初めてテントに出会ったのっていつなんですか?

丸:小学生ぐらいのときに、大阪でとある芝居を見たことがあって。
テントの最初はそこだったね。その頃から唐組の芝居もビデオとかで見てたなー。

オ:じゃあ根っからの演劇少年だったって言えるんですね。

丸:そうだね。人前に立ちたいとかってのはそういうの無かったんだけどそういうの恥ずかしかったし。
まあ野球も平行してやってたしね子供のころは。
でも高校に野球部なかったし。野球少年が一転して演劇少年になっちゃったんだ。

オ:今回実は厚人さんが長渕剛好きで、僕が尾崎豊好きってことから、長渕VS尾崎っていう裏のテーマがあるんですけど。

丸:(笑)VSって。・。・。
昔、どこかで見たんだけど、長渕さんが尾崎豊さんが死んだときにコメントかなんかよせてたみたいで。
「ああいう才能ある若いミュージシャンが命を絶ってしまうっていうこと事態は物凄く嘆かわしいことだ」みたいな。
長渕さんは長渕さんで尾崎豊さんのことは認めてたと思うし。ファンは勝手だよ。

オ:全然僕も長渕剛好きなんですけどね。
今回稽古場で面白かったのが、厚人さんが筋トレの最中に長渕を流して、厚人さんだけテンションが上がってるっていう。

丸:そうそう頑張れる。

オ:長渕剛と初めて出会ったのはいつ頃ですか?

丸:それも唐十郎を知ったのと同じぐらいだね。小学校・・・三年ぐらいじゃないかな?
親父がフォーク好きだったから、その流れで長渕剛を聞いてて、何か自分の中で凄く印象に残ってて。
だからほんと10歳ぐらいから剛ファン。

オ:そんな小さい頃から聞いてたらド硬派になりますよね。

丸:そうなんだよ他を聞かなくなるんだよ。
古いフォークは親父の影響で知ってるんだけどね。
吉田拓郎とか、南こうせつとか、ちょっと違うけどアリス、谷村新司とか。

オ:やっぱりなんか若干昭和のニオイしますよね厚人さんって。(笑)

丸:なんかねー。自分はそんなこと一つも思ってないのにね。みんなに昭和昭和昭和って言われる。

オ:実年齢より昔のこと知ってる感じがしますもんね。

丸:よく言われるねそれ。

オ:一番好きな曲とかってあります?

丸:「家族」っていう歌があって。ホンどド直球なんだけど。

オ:凄い題名ですね!

丸:長渕剛も、日常を歌ってる人だと思うのね。
自分の生まれたところとか生い立ちとかそういうものをいっぱい歌の中に盛り込んでて。
そこには必ずその家族への愛、ふるさとへの愛、日本っていう国への愛とかがあって、
「国を愛してるんだ。」「故郷を愛してるんだ。」「親父とお袋を愛してるんだ。」ってそういうことをストレートに歌う人っていないと思うんだよねー。
最近の丸尾さんの作品にもぴったりなんじゃないかと思うぐらいで。

オ:愛ですね。僕もやっぱり尾崎のどこが好きなのかって純粋すぎる愛情ですもん。

丸:あと言葉だよね。俺はそう思う。
歌とかセリフ、芝居っていうの、作品、物語、やっぱり言葉だと思う。

オ:唐さんの作品もそうですよね言葉の持つ破壊力っていうか。

丸:僕は言葉の力ってのを唐十郎に教わったのね。
で、更にその言葉ってのはどれだけの人間に作用するんだ。どれほど言葉ってのに影響力があるんだってのを長渕剛から教わったから。
「あなたの一番尊敬してる人は?」って聞かれると両親ですって答えちゃうけどさ。
また違う意味で師匠っていうのは唐十郎と長渕剛だよね。
役者っていうのは言葉で生きる人たちだから。
あと唐さんや長渕剛ってのはやっぱりライブにこだわるんだよね。
生であることに。生でることの強さ。生で言葉を。
CDを出してそれを100回聞いてもらって感動してもらうよりも、LIVEで涙を流してもらいたいっていう。

オ:演劇ってやっぱそこですもんね。

丸:ライブであることの意味。映画とかTVでは絶対ないわけだから。

オ:赤テントとか本当にそうですもんね。
同じ桟敷に若いのもおっちゃんも全部一緒に座って、同じ熱い空間を共有する。
やっぱり演劇以外に他にないですもんね。ああいうの。

丸:そういう意味でホントの意味でエンターテインメントという言葉が当てはまると思うんだよね。
ま、そういう風に言われると唐さんは怒るかもしれないけどね。(笑)

オ:今回の「赤とうがらし帝国」ではライブシーンやパフォーマンスシーンなんかもたくさん出てきますが、稽古してみてどうでした?

丸:パフォーマンスとかっていうのはやっぱり難しいね。
つまり肉体もまた言葉だっていうことをつきつめるから。
でもそこが大変なところを凄く狙ってるからねあの二人は。
だからこっちも本気でやらなきゃいけないなと凄く思ってる。

オ:最後に今回にかける意気込みを一言お願いします。

丸:丸尾さんに「丸ちゃん今回出てもらってありがたいけど、今までやったことないことも要求するよ。色々しんどいことも要求するけど頼むね。」と言われて。それとの戦いだよね。
だからどっちにも染まらない。丸山は丸山だったなって言われるのも嫌だし、鹿殺しの一人になるのも嫌だし。
それは僕と丸尾丸とチョビちゃんとの戦いでもあるんだけど。
鹿殺しでしか出来ないことと丸山でしか出来ないことってのを何とか掛け合わせたいよね。

オ:見たことない鹿殺しと、見たことない丸山厚人を見せられるようにってことですね。

丸:ゲストであるし、ゲストでないってのをうまく出来たらいいなって思うよね。
それにつきるよ。
俺のこと知らない鹿殺しファンに、あの人誰!?あの人次も出ないの?って言わせたいね。

オ:是非是非!よろしくお願いします。